2010年9月10日金曜日

YASSA HOYA

 先日9月1日、某所でとあるミュージシャンのライヴを観ました。

 9月1日は、防災の日です。そんな理由からか、「満月の夕」(まんげつのゆうべ)が演奏されました。

 「満月の夕」は、ソウル・フラワー・ユニオンの中川敬とヒートウェイヴの山口洋の共作による、阪神・淡路大震災を題材とした曲です。中川、山口両氏のそれぞれのグループで、歌詞も曲調もアレンジも異なるバージョンを発表しています。



 作品の成り立ち、二つのバージョンについて等々、詳しく知りたい方は、Wikpedia - 「満月の夕」
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BA%80%E6%9C%88%E3%81%AE%E5%A4%95



 わたくしは、だんぜん、ソウル・フラワー・ユニオン バージョンが好き、でした。

 三線、チンドン太鼓、お囃子というにぎやかな沖縄民謡的スタイルの中で唄われる美しい旋律。力強くもやさしく、かなしみの中にも笑いがあふれるような演奏で、聴くといつも気持ちが落ち着くような気がします。

 対してヒートウェイヴ バージョンは、もっと厳粛とした、重厚なロックバラードといった趣です。

 で。先日のライヴではどうだったのか、といいますと、ヒートウェイヴ バージョンに近いアレンジで唄われていたように思えました。そんなこともあって、ヒートウェイヴ バージョンを改めて聞き返してみまして。これはこれでいいなあ、なんて、改めて思いました。

 被災地でボランティア活動を行っていたソウル・フラワー・ユニオンの中川敬に誘われて東京から駆けつけた山口洋。被災地を一緒に巡る中、ギターと三線で一気に書き上げたメロディが「満月の夕」だといいます。

 その後、『自身の住む東京から見た被災地への思いを「書き足した」』とのことで、ヒートウェイヴ バージョンは、CD音源でも7分超の大作となっています。

 歌詞の違いが示すもの、7分超が示すもの……を改めて考えました。



中川敬──『この2人の距離感の違い(歌詞)は重要で、「旅」という安易な逃げが通用しない。"オマエはオマエの現場でやらなしゃあないんや"ということを否応なく示している』(HEATWAVE『1995』 宣材より)

山口洋──『俺は彼等のヴァージョンを歌うことは出来ない。だから東京でマスメディアが垂れ流す情報を観ていただけの立場から歌を仕上げた。この2つのヴァージョンの違いが示しているものは大きい。良し悪しの問題ではない。』(HEATWAVE『1995』 Self Discography より)



 詞を書き足さすにはいられなかったのでしょうか。厳かに、静かに、重々しい気持ちで向かい合わなくては唄えない、そんな唄なのでしょうか。

 自分の立場で、自分の現場でできること、やるべきことをやる。――という厳しさ、そして、決意について考えた夜でした。

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